当院のブログ

東洋医学の強みと弱みとは【西洋医学VS東洋医学】

東洋医学

こんにちは!

松山鍼灸整骨院 三浦です。

 

前回までは「西洋医学の強みと弱み」についてお送りしました。

今回は「東洋医学の強み」をお届けいたします。

 

そもそも東洋医学ってなに?

 

まずはじめに、東洋医学の歴史を少しお伝えしたいと思います。

東洋の伝統医学を大きく分類すると、ユナニ医学(イスラム医学)、アーユルヴェーダ(インド)、そして中国に起源を持ち東アジアに広まった中国医学があります。

今から2000年ほど前に中国医学の基礎が定まりました。

 

中国医学が、最初に日本にもたらされたのは奈良・平安時代です。

室町時代になると、中国から医師を招いたり、留学したりして、積極的な学術交流がなされました。

 

江戸の初めに鎖国が行われ、中国との交流も途絶えてしまいました。

「学ぶ」時代から、自分たちで「創り上げる」時代になり、今までに学んだ灸療法、鍼療法を下地に、日本人の体質に合った新しい鍼灸医学が創り出されました。

 

現在の東洋医学とは中国に起源を持ち、日本独自で発展をしてきたものということになります。

 

 

東洋医学の分類

東洋医学は「鍼灸」、「あん摩・指圧」、「漢方」の3つに分けることができます。

現代では「あん摩・指圧」の分野に西洋からのマッサージ、日本の柔道整復、整体などが融合して考え方や療法は広がりを見せています。

 

鍼灸・漢方の分野の多くは伝統的なものを引き継いでいます。

 

東洋医学の考え方

西洋医学と東洋医学の違いは、体の治し方にあります。

例えば工場に機械があったとします。

その機械が故障して止まってしまいました。

止まってしまった原因はネジが外れてしまったことでした。

ネジをはめたらまた動き出しました。

西洋医学の場合は、そのネジをはめて動き出せば治ったと考えます。

対処方法としては、油をさす(薬・注射)、ネジを新品に交換する(手術)ということになります。

 

それに対して、東洋医学の場合はなぜ、ネジが外れたかを考えます。

機械のネジは機械全体の振動が大きくて、その影響で外れた可能性があります。

そうなると、またネジをはめてもまた外れてしまう可能性があります。

よって振動を抑えることを考えます。

東洋医学では、機械を安定化させて、振動を抑えることにより、ネジが外れにくくなることで治ったと考えます。

 

東洋医学の4つの強み

 

①原因不明の症状を治療する2000年以上のデータベース

痛み・シビレ・耳鳴り・めまい・頭痛など、人の体の不調は様々です。

その中で、現代医学での精密な検査でも原因が特定できない症状は数多くあります。

しかし、基本的に東洋医学で症状を見る際に「原因不明はない」のです。

それは一体どうしてでしょうか?

 

その答えは、東洋医学の歴史の中にあります。

東洋医学は別名「経験医学」とも呼ばれています。

人の体は科学技術が発展した現在でも、2000年前、またそれ以上前でも基本的には変わっていません。

その歴史の中で、現代人、あなたが経験している病気、痛みなどの様々な症状は「過去の誰かがすでに経験していること」なのです。

その症状を解消するために、どのツボをどのように使えば効果的か、どの漢方がどのような人に適しているか、症状に対しての養生法などを数百年、数千年単位で蓄積し、体系立てたものが「中国医学」であり現在の「東洋医学」につながっているのです。

 

②骨格・筋肉・内臓・精神…すべてを統合したオーダーメイド治療

例えば、腰痛という腰の「痛み」という症状であってもどのように痛むのか、どの時間帯に痛むのか、どのような生活環境なのか、元々その人がどのような体質なのかで全く治療法や考え方が変わってきます。

東洋医学では、西洋医学のように「内科・外科・心療科・・・」などの分野には分かれていません。

常に「人の体は一つのもの」という捉え方をしています。

 

そのために「原因はこれのみだ」という断定をしません。

腰痛という症状であっても腰の筋肉の問題、骨の問題、内臓の問題、精神的な問題、元々の体質などそれらが複合的に絡み合って症状となっています。

その様々な体の状態を考慮した上で、その人に最適な治療法を選ぶことができるのが東洋医学なのです。

 

③副作用のない自然療法

東洋医学の重要な考え方として「人は自然とともに存在している」「人の体の原理と自然の原理は同じ」というものがあります。

この考え方に基づき、東洋医学の治療方法は「自己治癒力を最大限に引き出す」ことを最も重要なこととしています。

痛み止めの薬で「痛み」を抑える治療方法を選択した場合でも、「最後の最後に体を治すのは自己治癒力しかない」のです。

薬が切れて自己治癒力の働きが不十分であれば痛みはまた戻ってきてしまいます。

このことから東洋医学では、体の仕組みや自然の摂理に逆らわずに、症状や個人個人に合わせて治療方法を選択していきます。

 

ツボの効果、漢方の効果、バランスの調整、筋肉・骨格の調整などの方法によって自己治癒力を高めることは、体に無理な負担をかけない「副作用のない治療法」ということもできます。

 

④予防医学の最先端

東洋医学の最大の目的は「未病を治す」ことと言われています。

「未病」(みびょう)とは、まだ病気になってはいないがその前段階の兆候が現れている場合のことを指します。

昨今、我が国でも高齢化社会の影響で医療費の高騰が問題になり、予防医学にスポットライトが当てられてきました。

東洋医学では病気になる前の養生法や「このような生活をしているとこのような病気や症状を引き起こす」ということも細かく記されています。

 

そして、元々の体質やまだ自分でも気がつかない体の兆候についても舌・顔色・匂い・目・脈などから病気の前兆を見つけ出していきます。

これは、病院の検査では問題ない程度のごく初期段階のものも含まれています。東洋医学は伝統的なものですが、予防医学の観点でみると最先端とも言えます。

この東洋医学の「未病」・自分の体質を知るという考え方が広がれば医療費の問題解決にも大きな助けとなってくれるはずです。

 

 

東洋医学の強みのまとめ

東洋医学は、数千年単位の経験からどのような人、どのような環境、どのような条件で病気になるのかということを教えてくれています。

その中で、どういう考え方や治療をしていけば良いのかということはすでに解き明かされていることです。

 

それは特別なことではなく、人が人らしく自然と調和しながら生かされているという考え方に基づいています。

私たち現代人は、文明の発達によりついつい忘れてしまいがちな「本来あるべき姿」を示してくれているのが東洋医学なのです。

 

 

東洋医学の弱みについて

 

①外傷、感染症など緊急を要する症状に対する手立てが乏しい

前回、東洋医学の治療として、鍼灸・あんま・指圧・漢方があることをお伝えしました。

そしてこの治療法は、基本的に「体質を改善して自己治癒力を高めていく」というものです。

 

外傷や感染症に対する治療も例外ではありません。

このような症状が発生した場合は、治療によって傷口が早く治すように、感染症に打ち勝つために免疫力を高めるといった方向で考えていきます。

しかし、このような症状の初期段階は、一刻も早く傷口を塞ぐ、また感染症であれば、他に感染しないように症状を抑えるということも重要になってきます。

この分野の手立ては、残念ながら東洋医学の治療方法では対処し切れないものがあるのも事実です。

 

特に命に関わるような緊急性が高いものであればあるほど、西洋医学に比べて治療方法の観点からできることが少なくなってしまいます。

 

②術者によって効力の違いが大きい

東洋医学での治療方法は「漢方」以外の鍼灸・あんま・指圧では、術者が直接患者にコンタクトするというものです。

そのため術者の技量が治療結果に大きく反映されます。

治療内容についても、各治療師、各治療院で本当に様々です。

 

検査でも、顔色・脈・目・舌・左右のバランスなど、基本的に数値化できない「見た目」で判断していきます。

ですので、ここにも術者の経験や知識といったものが要求されてきます。

 

西洋医学では、検査も数値化・画像化して、処方される薬も一律のため、どこの病院を選んでも一定水準の効果が期待できます。

 

また、直接のやり取りの中で、治療が行われるので、患者と術者の「相性」というものもあります。

技術の高い先生でも治せない症状が、経験の浅い先生の治療では治るということもあり得ることなのです。

 

このようなことから、東洋医学の治療を受けるためにどの先生、どの治療院を選ぶかということは西洋医学に比べて非常に難しいものと言えるでしょう。

 

③科学的に証明できない事柄も多い

東洋医学の最大の弱点?といってもいいのかもしれません。

それは何と言っても「怪しい」(笑)。

そう感じている人も少なからずいると思います。

それは、「科学的に証明できない」ことが多いという理由が挙げられます。

近年では、東洋医学も科学的な解明や証明が進んできています。

鍼やお灸の効果も解剖学または生理学の観点から証明できるようになってきました。

しかし、現代の科学でもまだまだ解明できていないことが多いのも事実です。

 

「ツボ」とはなにか?

ツボを押したり、鍼をしたり、お灸をすることで、神経・特に自律神経に働きかけるとされています。

 

自律神経は血圧や呼吸、体温などを調節する人体の生命維持に欠かせないもので、自律神経に働きかけることで体の不調を整えていると考えられていますが、確実な証明はまだなされていないのが現状です。

 

現代に伝わるツボは、東洋医学が長い歴史の中で積み上げてきた検証に基づいたもので、その数はWHO(世界保健機構)に認知されている数だけでも全身に361ヶ所あるといわれています。

このツボの健康効果についてはこれまで長い間議論されてきましたが、実は科学的な根拠に基づく証明はされていません。

 

「気」というものの証明の難しさ

どうして「ツボ」というものが科学的に証明されていないのでしょうか?

これには、東洋医学の概念で重要な「気」という存在があります。

東洋医学では、血液の流れとともに、この気の流れが良いことが健康にとって重要なことだと考えています。

この概念は西洋医学には全くない、東洋医学独自のものになります。

しかし、この目に見えない「気」というものを現在のところ画像化したり、数値化できていないために存在そのものを疑問視する意見も少なくありません。

このツボが科学的に証明できないのは、そもそもツボは「気の集まるところ」とされているからです。

 

④考え方、価値観が宗教的?

前回、東洋医学の強み編でお伝えしたように、東洋医学には「人の体は自然とともに存在している」、「人の体の原理と自然の原理は同じ」という考え方があります。

この考え方は、どこか道徳的・宗教的で医学という分野で受け入れにくい方もいるかもしれません。

ではなぜ、このような考え方が生まれたのでしょうか?

東洋医学は何百年、何千年を経て体系立てられていきましたが、それ以前、まだ医学というものが明確でなかった頃はどうだったのでしょうか?

これは、イメージしてもらいやすいかと思いますが、病気や災いが起こると人々は、神や自然に対して祈りを捧げることで問題に対処できると考えられていた時代がありました。

そこから、宗教や医学、またはその他の分野に枝分かれしていったと考えられます。

その一番根本的な部分が、西洋医学にはない、東洋医学のみに見られる「思想」ということになります。

 

このようなことも、まだまだ科学的な裏付けが不十分なために認知されにくい要因になっているのかもしれません。

 

東洋医学の弱みのまとめ

 

東洋医学の弱点は、一つ目として、緊急性の高い症状に対して手立てが少ない、または難しい場合があるというところです。

2つ目は、術者によって効果が全く異なるので、患者側からすれば選ぶのが難しいということが挙げられます。

そして、なかなか西洋医学のように一般的に東洋医学が広まっていかないのは、ツボや気をはじめとして「科学的に証明できない」ことも多いということがあります。

 

伝統医学と言われ、西洋医学が発展する以前は一般的な医療といえば、東洋医学が主流でした。

しかし、西洋医学と同様、急速に発展していく現代社会において東洋医学のみでは、対処しきれない部分が大きくなっていっているのも事実です。

 

総合評価

 

今回までで2回にわたり、「西洋医学VS東洋医学」のタイトルでそれぞれの強み・弱みについてお伝えしてきました。

ここまでご覧いただいた方はお気づきかと思います。

西洋医学の強みは東洋医学の弱点を、東洋医学の強みは西洋医学の弱点を相互に補完できるのです。

しかし、現状の医療の制度や認知度などさまざまな要因によって現在はそうなっていません。

これは、治療を必要な人の立場からするとかなりの不利益となってしまっていると考えられます。

そして、医療の制度が変わるというのはかなりの労力と時間を要するものです。

ですから、まずは治療が必要になった場合、個人個人が視野を幅広く持って選択していくことが大切になってきます。

そして、そのような考え方が広まれば、「西洋医学」「東洋医学」という垣根を超えて、新しい医学・医療が発展していくのだと思います。

 

次回は、今回お伝えした東洋医学の独自の概念「気」というものが、何かということをお伝えして行こうと思います。

少し怪しい…でもなんとなく興味があると思っている人も多いのではないでしょうか?

「気」という考え方をうまく取り入れ、健康に活かしていただければと思います。お楽しみに^ ^